ゲームのユーザーはこちらの予想を簡単に凌駕する

ゲーム開発

ゲームには、そのゲームを遊んでくれるユーザーがいます。
そしてゲームを開発する上で、ユーザーを意識して開発を進めるのは至極当たり前のことです。
「どのように遊んでもらうか」「どこで面白さを感じてもらうか」みたいなことは常に意識してゲーム開発が進んで行きます。
当然ゲームの仕様にもそれらは反映されますし、ユーザーに快適にゲームを遊んでもらえるよう可能な限りテストをします。

ところが、いくらユーザーのことをきちんと考えながらゲーム開発を進めていても、ユーザーは開発側の予想を軽く凌駕するような事態をたびたび引き起こします。
今回は、僕が今まで遭遇した「ユーザー侮りがたし…」と感じた事例を紹介していきます。

難易度をかなり上げてもすぐに攻略するユーザー

とあるゲームのプロジェクトで、ギルド内のユーザーで挑むレイドボス的なイベントの改修を担当しました。
今までは、ステータスこそ高いものの、編成が強ければ大して苦労せずに倒せるタイプの敵の設計でした。
それを改修する際に、「ユーザーにもっとやり応えのある敵にしよう!」という方針に変わりました。

そして、開発も順調に進み、いよいよバランス調整となりました。
今までとはだいぶ仕様の異なるボスだったため、開発チーム内で実際にテストプレイしてチェックすることになりました。(当然ガチ編成です)
「やべぇ、敵強い!」「ダメージ痛ええ!!」みたいなやり取りをしながら何度かテストプレイを行いました。
最終的に、仕様を把握している開発チームでも苦戦するレベルの仕上がりになりました。
「これなら上位ユーザーも苦戦するはず」とみんなニヤついていたような気がします(笑)

そしていざ本番を迎え、ユーザーのゲーム内での様子をチェックしました。
最初こそこちらの想定通りに苦戦してくれていましたが、だんだんと雲行きが変わっていきます。
そこにはあっという間に攻略法を把握し、次々とボスを撃破していくユーザーの姿がありました…(笑)

余裕をもって設けたレベル上限に迫りくるユーザー

ゲームのレベルというものは、ユーザーがゲームを遊ぶ上でのモチベーションの1つです。
特に、ソーシャルゲームではユーザーのモチベーション低下は死活問題なので、レベル上限というのはなかなか到達できないように設計することが多いです。

当時関わっていたリリースを間近に控えたとあるゲームでも、当然かなり高くレベル上限を設けていました。
理論上は数年は持つ設計をしていました。

しかし、いざリリースを迎えると、リリース数か月後にユーザーデータを確認していたプランナーから「ヤスの者さん、レベル上限に達しそうなユーザーがいるので対応してください」と相談されました。
そのユーザーの現在レベルと必要経験値を確認して「マジかよ…」となった思い出があります。
ちなみに、マスタ設定で容易に調整可能だったので対応自体はすぐできました。

スキルの想定外の使い方を発見するユーザー

新しくリリースするゲームのスキルというのは、強すぎても弱すぎてもいけません。
強すぎるとゲームバランスが崩壊しますし、弱すぎるとユーザーに見向きもされません。
したがって、スキルの内容はかなり慎重に検討することが多いです。

ところが、満を持して「このスキルならちょうどよい強さだ」と自信をもってリリースしたスキルに、ゲームバランス崩壊レベルの有用すぎる使い方が見つかってしまう、というのはけっこうあるあるだったりします。
そして緊急修正が発生、という流れは皆さんも何かしらのゲームで経験したことがあるのではないでしょうか?

単純にプランナーの想定が甘すぎたということもありますが、しっかりゲームをやりこんでいるプランナーでも見過ごしてリリースしてしまうことがあったりするので、完全になくすことが難しい悩ましい現象だったりします。

極めてレアなケースでのみ発生するバグに遭遇するユーザー

とあるゲームで「課金アイテムを購入したのにゲームに反映されない」という問い合わせがありました。
課金周りの不具合は非常に重大な不具合です。
すぐさま僕は調査に取り掛かりました。

ログを見ると確かにアイテムが反映されていません。
しかし、処理を見てみても特におかしな処理は見つかりませんでした。
現に、多くのユーザーは問題なく課金アイテムを購入できていますし、問い合わせをしたユーザーもその問い合わせをした時以外は課金アイテムを購入できていました。

結論から言うと、課金処理では外部とのAPI通信を何度か行っており、そのうちの1つが失敗する際に課金アイテムが正常に購入できない現象が発生しているようでした。
プラットフォームにもよりますが、大抵の場合は「ユーザーが購入確定操作を行ったことの通知を受け取る」「システムが購入処理を完了したことの通知を受け取る」の2つのAPIは最低でも実行することになります。
そしてシステムの購入処理は完了したものの、通知が失敗した場合に不具合が発生している、ということでした。
これは、「通信環境が不安定な環境で課金処理を行い、購入処理完了の通知のみ失敗する」という狙って行うのが難しい状況でのみ発生するレアな不具合でした。
(APIが失敗することは珍しくありませんが、今回のケースでは「全部のAPI通信が失敗する」「全部のAPI通信が成功する」のパターンがほとんどです)

幸いなことに、プラットフォーム側にユーザーの課金履歴というものが存在していてCSVダウンロードも可能でした。
それを利用して「プラットフォーム側の課金履歴とゲーム側の課金履歴に齟齬が発生していた場合は補填処理を行う」というバッチを作成して事なきを得ました。

ちょっとした変化を見逃さない目ざといユーザー

とあるゲームで新たなレアリティを追加することになりました。(ここでは仮にXRとします)
機能の実装はもちろんですが、画面に表示している一部の注意文言についても修正が必要でした。
「SR、SSRは~」のような注意文言を「SR、SSR、XRは~」というように修正する感じです。

文言の修正自体は大した手間でもないのですぐ完了しました。
ところが何かしらの手違いでその文言が本番に反映されてしまいました。
間違って本番反映をしてしまったことにはすぐ気づけたので、あわてて文言を元に戻して再度本番反映を行いました。
文言自体は画面の下の方に小さく表示されているもので、さらに平日の日中の10分程度の時間しかその文言は本番に表示されていなかったので、「まぁユーザーにはばれないだろう」と一安心してました。

ところがそのわずかな時間でユーザーに見つかってしまいました。
しかもスクリーンショット付きでゲーム内掲示板に報告されるというおまけつきです。
どちらかと言うとポジティブな情報であったため、深刻な問題にはならなかったのが不幸中の幸いです。

めちゃくちゃ運が悪いユーザー

ゲームに確率系の機能はよくあります。
ガチャはもちろんのこと、「○%の確率で大ダメージ!」みたいなスキルはよく見かけます。
確率というのは数万回、数十万回といった多くの試行回数であれば設定した○%という値に収束していきます。
一方で数回、数十回といった少ない試行回数であればかなりばらつきが出ます。
当然ユーザーもそのばらつきに出くわすことになります。

とあるゲームで「70%の確率でステータス大幅UP!失敗したらHP1!」みたいなスキルがありました。
そしてそのスキルに関する問い合わせで「何回やっても全く成功しない」という問い合わせがありました。
早速マスタやソースコードを確認してみましたが、特に問題なしでした。
さらに、全ユーザーのスキル履歴をチェックして、成功数と失敗数を集計してみました。
集計結果は69.○○%、つまりは約70%で想定通りの挙動です。
つまり、「単にそのユーザーがめちゃくちゃ運が悪かった」というオチです。

また、逆にめちゃくちゃ運が良いユーザーというのもいます。
とあるゲームでイベントで1枚だけ配布予定の超レアキャラがいました。
ただ「ゲーム内で手に入る可能性0なのはかわいそうだから、極々低確率で入手できるようにしておこう」となりました。
とは言え簡単に入手できるようにはなっておらず、0.000…1%といったような「万が一」どころではない低確率の設定になっていました。
ところがその信じられないくらい低確率にも関わらず、見事に超レアキャラを獲得したユーザーが1人いたそうです。

開発チーム顔負けの不具合対応力の高いユーザー

とあるゲームで原因不明の不具合が見つかりました。
数人がかりで調査に取り組むも一向に原因が特定できず、ただただ時間がすぎていきました。

そんな時にあるユーザーから救いの手が差し伸べられました。
「おそらく○○の△△が原因だと思われます。××の対応で解決するはずです」といった内容の問い合わせメールが届きました。
試しに記載された通りの対応をしてみると見事解決。
そのユーザーは開発チームの中で救いの神扱いをされていました。

まとめ

ゲーム開発において、ユーザーの行動がこちらの予想を大きく上回ることはしばしばあります。
攻略スピードやバグの発見、システムの活用方法に至るまで、ユーザーの創意工夫や対応力は目を見張るものがあります。

ユーザーの行動を完全に予測することができるのであればそれに越したことはありませんが、ほぼ無理でしょう。
大事なのは、「常にユーザーはこちらの予想を上回りかねない」ということを意識しておくことです。
その姿勢さえ忘れなければ、いざ予想外のユーザーの行動に出くわした時にあたふたせずに済むはずです。

また、そんな予想外のユーザーの行動は、開発側としては非常に面白いものでもあります。
ぜひともユーザーの予想外の行動にビビらずに、それもまたゲーム開発の醍醐味だと思って楽しんでください。

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